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yohm's blog

プログラミングや研究などについて

Introduction of Weighted Social Network Model

これまで人間関係のネットワークの特徴がICTを使ったコミュニケーションのログを解析することによって明らかになってきました。例えば「弱い紐帯の仮説」という社会学で提唱されていた社会ネットワークについての仮説があります。この仮説ではネットワークのトポロジーとリンクの強さについての関係について、リンクが強いほどその両端のノード(人)は共通の友人を持つ頻度が高いということを述べています。もっとざっくりというと「密に結合したコミュニティの中ではリンクが強く、コミュニティ間をつなぐリンクは弱い」ということです。Onnelaらによって一国の全人口規模の携帯電話ユーザーの利用記録の解析をした研究によって、上記の関係が定量的に確認されています。

このような特徴をもつネットワークはどのような過程で形成されるのか?それを理解するための数理モデルについても研究が進んでいます。ここではKumpulaらが提唱した Weighted Social Network model (WSNモデル)というモデルを紹介します。Kumpula et al., Phys. Rev. Let. 99, 228701 (2007)

このモデルはノード数Nの重み付き無向グラフを考え、”Global Attachment(GA)”, “Local Attachment(LA)”, “Node Deletion(ND)” という3つのルールでネットワークを更新していくモデルです。

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Global Attachment はあるノードが確率 \(p_r\) でランダムに選んだ別ノードにつながるというルールです。 例えば、たまたま同じ場所にいて知り合いになる、同じクラスになって知り合いになる、など既存の友人関係とは必ずしも関係のない人と出会う過程をモデル化しています。

一方、Local Attachment は友人に他の友人を紹介するという過程をモデル化しています。 ノード\(i\)が、隣接ノード\(j\)をリンクの重み \(w_{ij}\) に比例する確率で選び、さらにノード\(j\)の隣接ノード\(k\)を同様にリンクの重み\(w_{jk}\)に比例する確率で選びます。もし\(i\)と\(k\)の間にリンクが存在しなければ確率\(p_\Lambda\)でリンクを生成します。 この際に選択された \(i\), \(j\), \(k\)間の3本リンクは重みを \(\delta\) だけ増やします。友人同士で連絡を取り合うとリンクが強くなるということを表しています。

3つめのルールNode Deletionはノードを消すルールです。各タイムステップごとにノードをpdpdで削除し、新しいリンクの無いノードと入れ替えます。つまり選択されたノードの周りのリンクを全て削除することに相当します。もしこのルールが無いとリンクの数は永遠に増え続け最終的に完全グラフなるので、何かしらのリンクを削除するルールは必要不可欠になります。

このモデルでシミュレーションを行うと次の動画のようになります。 自発的にコミュニティ構造ができ、さらにそれらのコミュニティどうしは弱いリンクで繋がれるという現実で見られたパターンを再現します。

youtu.be

この動画を見るとどのようにしてコミュニティ構造が作られていくかがわかります。 まずノードはGlobal Attachmentによってランダムに別のノードに繋がれていき、コミュニティの「核」ができます。 Global Attachmentに繋がれたノードどうしはLocal Attachmentによってお互いをつなぐリンクを強化しつつ、友人を紹介することによって密につながりコミュニティを成長させていきます。 コミュニティは成長する過程でも、Global Attachmentによって弱いリンクがランダムに生成されますが、これがコミュニティ間をつなぐ弱い紐帯となります。 つまりLocal Attachmentというコミュニティを強固に形成する作用と、Global Attachmentというコミュニティどうしを散発的につなぐ作用の二つが重要な役割を果たしています。

このように2種類のリンク形成過程があるということは実データからも示唆されており(Kossinets et al., Science(2006))、それぞれFocal Closure、Cyclic Closureと呼ばれています。WSNモデルは、社会ネットワークでコミュニティの形成過程の本質をシンプルなモデルでうまく捉えているように思えます。個々のリンクの形成過程とネットワーク全体の構造の特徴の関係についての示唆に富むモデルと言えるでしょう。

またこの研究を起点としてテンポラルネットワーク(H.-H. Jo et al., PlosOne (2011))や多層ネットワークモデル(Y. Murase et al., Phys. Rev. E(2014))など様々な拡張も提案されています。